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仮題「競馬地獄篇」1

仮題「競馬地獄篇」1

男の名は馬並 鹿次郎といった35歳ぐらいだろう 鼻の下にひげを蓄えた長身の男である
新宿三平ストア近くのラーメン屋でラーメンをすすっている
汁を飲みほし いかつい顔で 店からでてきた

男はおもむろに 撚れ切ったスーツから財布を取り出し 中身を見る「万札が一枚もねーじゃん!」
そして 驚愕の顔から決意の顔へ「…やるか!競馬を!」男の背後から沸き立つ闘争のオーラ
メラメラメラ燃え立つ炎

男の足は新宿場外へ向かっていた

ふと男の足が止まる その先には映画館前の飲料メーカー自販機がズラーッと並ぶ通りがある
その自販機の下を箒でまさぐって小銭を捜す 四つん這い姿の短い頭に白いものが目立つおっさんの姿があった

「あの男は 有名な馬券師だった男だな… 今じゃ運に見放され あんな情けないことをやっていやがる…」
馬並鹿次郎はおっさんの背後に立っていた
おっさんが気配に気づき 振り返ると顔の前に1000円札がつきだされていた

「おっさん この1千円で人生…挽回してみな!」「えっ!!くれるんですか この俺に…」「すまねぇ~」頭を下げる
おっさんの姿  馬並の姿はもうそこにはなかった

新宿場外馬券売り場-

「両替ーっ 早いよー」 おばさんが 両替で並ぶのを嫌がる客から少しの手数料で馬券を買い取っているのだ
近くの民家の軒先では 予想を売っていたり 怪しげな出目表を売っていたりする また路上では予想の書いた
番号と電話先を記した紙を配っていたり 金貸しのやくざがうろうろしたりしている

その場外目指しぞくぞくと人が集まってくるのだった…

その場外に馬並はいた 周りは皆 競馬新聞とにらめっこ状態だ

「ちっ!新聞ばかりみやがって そんなもの見なくても当たる奴はあたるぜ!」

ザワザワと前の方が騒がしい 馬並も前のひとだかりが気になり顔をひょいと伸ばすと

ゴミ箱をひっくり返した男が ゴミをあたりにまき散らし ごみのなかから 客が捨てたはずれ馬券を選別してるではないか
「…地見屋か」馬並は納得した 初めて見る客はひんしゅくをかっている

「ヒョーきたねー なにやってやがんだ」「ゴミまき散らしやがってよー」
掃除のおばさんまでもが ブツブツと「わたしが掃除したってのに もー」と怒り心頭である

小学生の女の子は 父親に聞いている「ねぇ パパ なにやってるの?あのおじさん!」唖然とする父親
ヒステリックに女の子に叫ぶ「見ないの!!」

そんな 周りの声にも動じない地見屋だった 黙々と馬券を拾い集め 当たっているか確認中なのである

馬並は一人つぶやいた「地見屋というのは ゴミ箱をひっくり返して 客が間違って捨てた馬券の中に
当たり馬券がないか 拾うのが仕事だ」

「土 日のゴミの中にあるとされる馬券を
東西の全レースの払い戻し番号を暗記し 発走除外の返還馬券も暗記している あの男が探し出すのだ」

「そして 衆人から見られる軽蔑の視線にも耐えうる神経を持つ者だけができる 仕事だ」

その場から離れても地見屋のことが気になり
「それにしても 全く地見屋というのはしんどい仕事だな」「無から金を得るのがいかに大変か わかろうというものだ」とひとり納得したようにうなづいた
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